日本の紙・板紙の総生産量は、約3000万トンです。国民一人あたりの消費量は約250kgと世界のベスト5に入ります。「紙は文化のバロメ−タ−」とも言われます。新聞・雑誌・書籍などの情報媒体、また段ボ−ルや箱などの包装材料、あるいはティッシュ等の生活用品など、紙はさまざまな形で私たちの経済とくらしを支える大切な物資です。これらの役割は紙という素材だけが果たせるものであり、それゆえその重要性は今後も変わらないと見られ、国内での消費量も急変しないと思われます。

 この紙生産を支える原料として、日本では古紙が大きな役割を果たしています。年間で約1762万トンの古紙が原料として使われ、これは全原料の半分以上、58%を占めています。

  なお、残り約1266万トンの原料が原木から新たに作られるバ−ジンパルプであり、約2200万トンの木材が使われている事になります。

 世界の紙生産状況に視点を移すと、森林資源不足への懸念はより大きくなります。2001年現在の世界の紙生産は3億1千8百万トンであり、一人あたりの消費量は52.2キロとなります。しかし実際には紙の消費は先進国へ偏在しており、北米・西欧・NIES(台湾・韓国・旧香港)・日本などの地域だけで世界の紙・板紙の約70%を消費していますが、これらの国の人口が世界の総人口に占める割合はわずか15%強、1/6に過ぎません。

 今後世界の諸地域で経済・文化が発展し、その残る5/6の人たちが先進国と同様に紙を消費するようになれば、膨大な量の木材が必要になります。調査機関の予測でも、2010年には世界の紙・板紙需要は4億8千万トンと予測しています。

 現状においてでさえ開発途上国での熱帯林の減少は年間1540ha(これは北海道・九州・四国の合計面積に相当する)の割合で続いており、森林資源の浪費は地表の砂漠化、CO2ガス濃度の上昇による地球温暖化といった環境破壊を拡大する恐れがあります。約4.5回くり返し再利用できる古紙のセルロ−ス繊維を活用するリサイクルは、その分原木の消費を抑え、世界の森林資源を守ることに大きく貢献すると考えられます。

 余りしられてはいませんが、古紙から再生紙を生産する場合のエネルギ−は原木からバ−ジンパルプを作り、紙を生産する場合よりすくなくて済みます。特に機械パルプと比較した場合、古紙パルプは1/5のエネルギ−で同じトン数を生産することができます。

 より少ないエネルギ−で生産できるという事は、結果としてCO2の発生を抑制する事にもつながります。

 ゴミは80年代ごろから急増し、東京都を例に取るとバブル経済期の1991年度は一般廃棄物は、約470万トンとなり、その34%162万トンが紙ゴミで占められていました。当時は紙ゴミを含む可燃ゴミの20%、70万トンが焼却できず、そのまま埋め立てに回されていました。

 現在では日本全体で約2000箇所の清掃工場で国内のゴミの80%が焼却されていますが、本来なら資源として再生される古紙が紙ゴミ化し処分場の残容量を圧迫したり、無為に燃やされて熱やCO2を発生させている事になります。この問題については、企業のオフィスや一般家庭からの資源分別回収の促進、リサイクルの流れの成立が望まれます。

 古紙のリサイクルは、結果として森林資源を守り、エネルギ−資源を守り、一般・産業廃棄物を抑制し、CO2の発生や大気汚染、水質汚染をも抑制します。

 日本の古紙利用率は59%と世界に誇る高水準ですが、随所にまだ改善の余地があるとされています。資源環境に対する世界の趨勢から見ても、こうした努力を市民・企業・行政の三者が一体となって推し進めていくことが必要です。


  (全国製紙原料商工組合連合会HP
より抜粋)